夏休み(孫崎)
7月も終わり。
絵画教室に通う小学生たちは、先週から夏休みに入り
1ヶ月という長い長い休暇期間を
これから存分に楽しむのだろうなと
少しずつコントラストがはっきりしてくる
日焼けの跡を眺めながら想像する。
自分が小学生の頃はどうだったろう?
田舎に帰ったり、旅行に出かけたり、イベント盛沢山。
9月の新学期なんて、遠い遠い先のことのように
感じていたような気がする。
大人になった今はと言えば…
1ヶ月なんてあっという間。
秋の展示に向けて〆切が迫ってくる夏は
むしろ恐怖でしかない。
同じ1ヶ月という期間のはずなのに、
どうしてこうも時間の流れ方が違うのか。
一説によれば、その人が生きてきた年月に対して
時間の感じ方はこんな風に変わってくるのだという。
子供は生まれてからの時間がまだ少ない。
現在までの人生の時間を分母に、
1ヶ月を分子にしてみると
分母に対する分子の割合はそこそこ大きい。
一方で大人は、人生の時間が子供よりずっと長い。
分母は大きくなるが、分子となる1ヶ月は変わらないので
その結果、分母に対する分子の割合は
子どもに比べてぐんと小さくなる。
これが大人になるにつれ(年を取るにつれ?)
年月が早く感じる仕組みなんだとか。
そう言えば、パリにいた3年間。
もちろん絵も描いたけれど、
美術館を巡り、国を巡り、人と出会い、交流し
その3年という期間がとても長く感じて
当時は「人生の夏休みだ!」なんて言っていた。
けれども今は、3年後なんてすぐ目の前にあることのように
計画を立て、予定を考えて仕事をする。
過ぎ去った3年間なんて言わずもがな。
着実に年を重ねているという現実が
図らずも突き付けられたのである…。
先の分母と分子の理論からすれば、
人生の夏休みだなんて、
もうこれから来ることはないのかも知れないなぁ。
なんだか郷愁にも似た懐かしみを思い出しつつ、
つらつらと考えていたら、
またあっという間に時間が過ぎていくのである。
孫崎